今住んでる家の徒歩5分くらいのところに銭湯がある。藤の湯という。
そこそこ人通りの多い道から少し奥まったところにあり、細い路地を入った裏にある。
建物はとても立派で、昔ながらの番台や伝統的な家屋のつくり。
ひと通りの多い道とこの銭湯の間には、昭和から商いをやっていただろう古くからある商店があった。
商店の建物は普通の平屋で、あまり大きい建物ではないので、通りからも銭湯がかろうじて見えていた。
先日、この商店が取り壊されはじめた。
商店はずっと営業していなかったし、おそらく土地が売られたのだと思う。
この商店が壊されてから、たしか二日間くらいのあいだだけだったと思う。
通りから藤の湯の建物がみえる時期があった。ほんの二日間だけ。とても立派だった。
ちょうど、そのときに藤の湯にいくと、銭湯中に気持ちのよい陽射しが差し込むようになっていた。
いつもよりも居心地が良かったし、藤の湯の家屋自体も喜んでるように感じた。
「気持ちの良い陽射しが入ってきますね。
この商店の跡地は新しい建物が建ってしまうんですか?」
風呂をでて、牛乳を飲みながら、番台にいたおばあちゃんに訊いた。
「そうねえ。このままだったら嬉しいんだけど、
7階建てのマンションが建ってしまうんだよ。残念だけど」
通りからはこの藤の湯はもっと見えなくなってしまうだろうし、
陽の光が差し込むことも難しくなるだろう。
なんとなしに悲しい気持ちになったけど、
この藤の湯がこれまで大事にしてきた、ひとびとの生活の息遣いや集まるひと同士の繋がりは、
これからも続いていくだろうし、そうあって欲しいと願う。
0 件のコメント:
コメントを投稿